ことばの百科店

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「いくら」と「いくつ」

別の記事で、「関西地方の他の地域の言葉にはない いくつかの特徴(トゲ?)が伊勢ことばにはあります」と書きました。("「と抜け」はない”)それのもう一つの例をここで取り上げます。

伊勢ことばで育った人が進学や就職で大阪などに移り住んで最初に覚える関西弁のひとつが「なんぼ」ではないでしょうか。お店で何かを買ったとき、飲食店で飲み食いしたとき「なんぼ?」「なんぼですか?」と言います。ときたま自分の故郷に戻ったときでも同じような場面で「なんぼでっか」と(大阪人ぶって?)言う人もけっこういます。

こんなことを言うと「えっ?」と思う方が多いかも知れませんね。伊勢ことばというのは他府県、特に中部・東海より東の地方の人には関西弁としか聞こえないらしいので、伊勢ことばでも当然「なんぼ」は「なんぼ」と言うのだろうと思われがちです。でも実際はそうじゃないのですよ。

最近の若い人たちの話し方がどうなのか、故郷を離れて半世紀以上経つ私にはよくわからないのですが、伊勢ことばでは本来「なんぼ」は使いません。
仮にそれがお金の話であれば「いくら」と言いますし、一つ二つと数えられるものであれば「いくつ」と言います。誰かの年齢を尋ねる場面でも「いくつにならんしたん?」というのが普通の言い方です。

「なんぼ」は聞き方によっては「何本」のように聞こえることがあるので、「大阪ではお金の額や人の年齢を ”一本、二本”と数えるのか?」と質問する人がいたほどです。(昔の話ですが)

柳田國男の「蝸牛考」で有名な「方言周圏論」に従えば、京つまり都の言葉遣いが波紋のように周囲の地方へ伝わっていく過程で「なんぼ」はまだ伊勢地方にまで到達していない状態なのでしょうか。それとも、江戸・東京の文化的影響力が強くなったために「波紋」がこれ以上前進できなくなってしまったのでしょうか。

どちらにしても「関西地方の他の地域の言葉にはないトゲ」のひとつが「いくら/いくつ」かもしれません。


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