ことばの百科店

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おや(親)

この記事で取り上げる伊勢ことばは「おや(親)」という単語です。
「えーーーっ?」という声が聞こえてきそうですね。
「おや(親)」なんて言葉は日本中どこへ行っても使うだろ!それのどこが伊勢方言だよ?

ごもっとも。全くおっしゃるとおりです。柳田國男『蝸牛考』を読むと、カタツムリやメダカを表す方言は地方ごとに種類が豊富にあるのに、たとえば、松や竹は日本のどこへ行っても「マツ」であり「タケ」だそうです。「おや(親)」もその仲間でしょうね。どこへ行っても「おや」は「おや」でしょうし、沖縄でも少し発音が変化しているけども「うや(親)」というらしいですね。

⌘⌘⌘⌘てぃんさぐぬ花や
⌘⌘⌘⌘爪先(ちみさち)に染(す)みてぃ
⌘⌘⌘⌘親(うや)ぬ教(ゆ)し事(ぐとぅ)や
⌘⌘⌘⌘肝(ちむ)に染みり

しかし、私がここで話題にしたいのは「おや(親)」という語彙そのものではなくアクセントです。ご承知のように日本語のアクセント体系は英語などのような強弱アクセントではなく高低アクセントですよね。それも中国語(特に北京語)のように一個の音節の中で上がったり下がったりするのではなく、拍と拍との相対的な高低で語の意味が違ってきます。

「拍(モーラ)」とは何か・・・詳しく説明している余裕はありませんのでウィキペディアでもなんでも適当にググってください。(というより私自身よくわかっていないので^^;)

何か楽器をお持ちの方は(特に鍵盤楽器がいいですね)「ドド」と鳴らしてみてください。これは東京式アクセントで「親が」と発音した場合にはこう聞こえる、という意味です。もちろん「ドド」じゃなく「ドド」でもいいですし「レファミ」でもかまいません。要は直前の拍より高いか低いかだけが大切です。

「親」ではなく「親が」としたのは、「〇〇」のあとに「が」とか「と」などの助詞が来る場合「ドレレ」と続くのか「ドド」と続くのかがわかりづらいからです。後ろに「テニヲハ」をつけるとその辺がわかりやすくなります。「親」も「姉」も単独で言うと「ド」ですが、「親が」は「ドド」で「姉が」は「ドレレ」になりますよね。

同じ要領で楽器を「ドド」と鳴らしてください。関西式アクセントで「親が」と発音するとこうなります。

じゃあ伊勢ことばではどうなんだろう、という元々の話題に戻りましょう。多くの方がご存じのように(そんなことはないか・・・)伊勢ことばは基本的に近畿方言の一種でありアクセントも関西風といえます。ですから「親が」と発音すれば当然「ドド」となります。なるはずです。でもどっこい、そう単純に割りきれないのですよ。

あっさり結論を言ってしまいますと「ドド」も「ドド」もあるのです。
ふーん、じゃあどっちでもいいのか。いえ、違います。「ドド」と「ドド」は使う場面が違うのです。
そんな馬鹿な、「親」という言葉の意味が何種類もあるのかよ。はい、実は「親」が人間の場合は関西式に「ドド」であり、人間以外の動物の場合は東京式アクセントで「ドド」と発音するのです。

そんな方言って聞いたことあります?日本中にはたくさんの、細かく分けると数え切れないほどたくさんの方言があるはずですが、「親」という言葉を人間なのか人間以外の動物なのかで言い分ける、そんな方言がほかにあるでしょうか。

今は伊勢市に編入されている伊勢湾沿いの漁村出身のお年寄り(男性)と話をしたことがありますが、その方も明確にその使い分けをしていました。ですから私が育った狭い地域だけの特殊な現象ではないはずです。

各地を回って方言を調査なさっている先生方や学生さん方はどのような方法で調査なさっているのでしょうか。同じひとつの単語がこういう場合はこんなアクセントで、そうでない場合は別のアクセントでなんて、どうすれば「発見」できるのでしょうか。

方言に関する本を図書館などでもよく手にとってみるのですが、伊勢ことばに関するそういった指摘は一度も目にしたことがありません。専門家しか目を通さないような学術書なら載っているのでしょうか。どなたかご存知であればぜひご連絡ください。


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