ことばの百科店

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「ぞな」について

主に大正時代に活躍した作家、梶井基次郎(Wikipedia「梶井基次郎」)の代表作に「城のある町にて」があります。
物語の舞台は私の故郷・三重県松阪です。
作品の初めのほうに「家の近所にお城跡がありまして峻の散歩にはちょうど良いと思います」うんぬん、とありますが、ここでいう「城」は松阪城址を指しています。
主人公の峻(たかし)が姉夫婦とその娘・勝子と4人で城跡へ散歩に出かける場面で勝子の祖母が勝子に向かい「勝子、帰ろ帰ろ言わんのやんな」と言います。幼い少女がすぐ退屈して帰りたがるのを見越して釘を刺すように言うのですが、問題はこの「・・・やんな」です。

東海三県(愛知・岐阜・三重)の方言を紹介する本、書名も著者名も忘れてしまいましたが、昔読んだ本で
「・・・やんな」 は 「・・・やな」 が変化したものだろう
と説明されていたのを見てガクッときたことがありました。愛知県の方言には詳しいが三重県の方言はついでに紹介した、という感じの本でした。

その土地で育った人間ならすぐわかることなのですが、「・・・やんな」 は「・・・やぞな」なのです。
私は子どもの頃、毎朝のように母に「はよ起きなあい。(学校に)遅れるぞな」と言われて床を離れました。「遅れるぞな」はしばしば「遅れるんな」とも言います。大阪弁で「そうですな」が「そうでんな」になるのと全く同じ現象(撥音化)です。
このように「ぞな」は「んな」とも発音されて、伊勢ことばでは頻繁に使われます。
⌘⌘⌘⌘「あるぞな」「あかんぞな」「もう行ったぞな」etc

「・・・やんな」 は 「・・・やな」 が変化したもの、というのが見当違いの説だということが分かっていただけるでしょう。

「ぞな」といえば多くの方は夏目漱石の「坊ちゃん」に登場する「そりゃ、イナゴぞな、もし」を思い浮かべるかもしれません。漱石が伊予地方の方言をどの程度正確に描写しているのか私には判断がつきませんが、伊勢ことばでこのせりふを言うならば「そら、イナゴやぞな(イナゴやんな)」となるでしょう。伊勢ことばの「ぞな」は決して体言(名詞など)の直後には付かないのです。

私はこの「ぞな(xona)」をハンドル(ハンドルネームとも言いますね)としてパソコン通信の時代から、もう20年くらい使っています。それで「なつかしき伊勢ことば」の最初に取り上げました。


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