ことばの百科店

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そんな人だァない

日本語文法の話題で「断定の助動詞」が取り上げられることがよくあります。「・・・だ」「・・・じゃ」「・・・や」の「だ」「じゃ」「や」がそれですね。(それ以外にもあるのかな?)
近畿地方では大抵「や」を使いますが(「そうや、そうや」のように)、そのほかの地方は東日本では「だ」で西日本は「じゃ」を使うのだと思われているようです。実際はそんな単純な分布ではなくて、西日本でも島根県や鳥取県の大部分では「だ」を使うそうです。ここで問題は「大部分」であって決して「全部」じゃないという点です。「だ」を使う地域に囲まれるような形で 「じゃ」を使う地域が点在しているのです。

例えば鳥取県の場合、殆どの地域では「ああだ」「こうだ」「それは〇〇だ」という言い方をしますが、中には(ほんの一部ですが)「ああじゃ」「こうじゃ」「それは〇〇じゃ」という言い方をする地域があります。たいていは山間部の辺鄙(へんぴ)な田舎で(失礼!)、若い人たちの働き口があまりありませんから殆どは地域外へ働きに出ます。つまり、「・・・じゃ」ではなく「・・・だ」を使う地域へ行くわけです。そういう地域で「ああじゃ」「こうじゃ」「それは〇〇じゃ」などという喋り方をすると何かと からかわれたり ひやかされたり という事になります。

「**の奥には蛇(じゃ)が出るそうじゃが、うそじゃか本当(ほん)じゃか 行ってみんじゃけ わからんじゃが」

これは普段「・・・だ」を使う人が「・・・じゃ」の地域の話し方をからかうときの決まり文句です。(注釈は省略しますww  「**」はもちろんそこの地名です)
からかわれて恥ずかしい、悔しい思いをしますから誰しも「・・・じゃ」を使わず「・・・だ」を使うようになります。職場でだけでなく自分の村へ帰っても「・・・だ」を使って生活します。ですから日常生活でも「・・・じゃ」を使う人は少数派になりつつあります。特に若い人たちは「・・・じゃ」を殆ど使わなくなりました。

柳田國男の「蝸牛考」で有名な「方言周圏論」というのがありますが、そういう現象を早送りで見ているような…と言うのは言い過ぎでしょうか。

ところがです、他の記事でも紹介している「モジク現象」がここでも見られるのです。("「モジク現象」とは?”
特に年配の方に多い感じがするのですが、例えば「(誰それは)そんな人じゃない」というべきを「そんな人だァない」と言うのをよく耳にします。 「・・・じゃ」と言わないようにと意識しすぎて「・・・だ」と言ってしまうのだろうと思われます。

あと何年かすると、この地区で「・・・じゃ」を使う人はいなくなるかも知れません。しかし、「・・・じゃない」を「・・・だァない」と言ってしまう人はその後も何年かは消えないような気がするのですが・・・どうなんでしょう。


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