ことばの百科店

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ご自分がお調べ致します

あいも変わらず、迷惑な電子メールが毎日送られてきます。こまめに削除していてもすぐにたまってしまいます。
最近送られてきた迷惑メールの中にこんな「傑作」がありました。

「私どものメールをご拝読いただきましてありがとうございます」

「拝読」って「有難い気持ちを持って、拝むように読む」ことですよね。
何でこんな迷惑メールを「拝読」しなきゃならんのか、腹が立つよりも笑ってしまいました。

いや、待て待て、これと似たような表現をどっかで聞いたことがあるぞ。あ、そうだ、かつて廃品回収業者が街を流しながら言っていた

「高く高くお買い上げいたします」

がそうだ。

敬語の基本は、相手を立てて自分はへりくだる、ということだと思うのですが、自分が書いたものを客が「拝読」したり、客が手放すものを自分が買い「上げる」のでは立場が正反対になってしまいます。
「ご持参ください」にしてもそうです。顧客に向かって「持って参れ」とは何たる無礼な言いぐさですか。
(この「持参」については、ずいぶん昔からこんなふうに使われていて「もはや、誤用とは言えない」と主張する人が多いのも事実ですが)

この程度のことがわからない人が増えてきたということはおおげさに言えば、日本語の、というより日本文化の最も根源的な部分が根腐れし始めたのかもしれませんね。
敬語の概念そのものがきれいさっぱり消滅するのならそれはそれで日本語の新しい姿かもしれませんが、「丁寧に言わなきゃ」「敬語を使わなきゃ」という意識だけはしつっこく残っているわけですから、やっかいです。

何年か前、パソコンの調子が悪くなってメーカーのサポート窓口に電話したことがありました。対応してくれたのは若い感じの男性。かなり長時間の電話になったのですが、喋っているうちに変なことに気づきました。その男性が時々「ご自分」という言葉を発するのですが、その「ご自分」という言葉と話の流れ(つまり文脈)とが全く合わないのです。もしや?と思ってその男性(Aさんとしましょう)に「あの、あなたがさっきおっしゃった『ご自分』ってAさんのこと?」と訊いてみたら「はい、そうです」という答えなんですよ。

つまり、その男性は自分自身のことを「ご自分」と呼んでいるのです。これには本当に驚きました。
名前を言えば知らない人はいない有名企業、天下のN**で電話サポート(つまり接客業務)に携わっている人間がこのありさまです。
言葉の頭に「ご」とか「お」とかを付ければ物言いが丁寧になると信じ込んでいるのでしょうか。ここまでひどいとは思いませんでした。

「伺います」は、それだけでじゅうぶん丁寧な謙譲表現なのですが、それを「お伺いします」という人が多いですよね。「お」を付けなきゃ、という意識がそうさせるのでしょうか。そのうち、「いらっしゃる」に「お」を付けて「おいらっしゃる」という人が現れそうですね。


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