ことばの百科店

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なぜ日本人はカタカナや横文字に弱いのか

2020年と言えば新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で世界中が大混乱に陥った年として、今後何十年も(何百年も?)語り伝えられることになりそうですね。今これを書いている時点ではまだ終息には程遠い状態ですので「2020年は・・・」という表現が将来も適切かどうか判断がむずかしいのですが。

この問題に関して公官庁や報道機関から出される発言の中には過去にはあまり聞かなかったカタカナ言葉が数多くあり、一部の人からは苦情やら叱責やらの声が聞こえて来ます。

例えば、「爆発的な感染者急増」の意味で使われる「オーバーシュート」があります。英語の「overshoot」のつもりらしいのですが、辞典で調べても「overshoot」は「行きすぎる」「通り越す」くらいの意味しかありません。英語圏で何十年も暮らしている人たちも「オーバーシュートを感染爆発の意味で使っても通じないだろう」と言います。

「クラスター(葡萄などの「房」、集団、群れ)」だの「ロックダウン(公共施設等の封鎖)」だの「アウトブレイク(突発的な発生)」だの色々あります。それらが意味することがらは日本人にとって理解不能なほど高度なものではありませんし、昔からある日本語で正確に表現できるはずの概念です。

カタカナの言葉を多用する状況に、閣僚からも疑問の声が上がっています。河野太郎防衛相は記者会見で「日本語で言えることをわざわざ片仮名で言う必要があるのか。分かりにくいという声が出ている」と発言しました。

2020年03月29日の「河北新報」によると、

科学コミュニケーションを専門とする東北大東北メディカル・メガバンク機構の長神風二特任教授は「一般市民にとって片仮名表記の用語が分かりにくいのは事実だ」と強調。「できるだけ日本語に置き換え、状況に応じて表現を変えていく柔軟さも必要ではないか」と提案した。 ("新型コロナで片仮名乱発「分かりづらい」")

ということらしいのですが、ここで私が引っかかったのは「できるだけ日本語に置き換え・・・」という言い方です。日本語に置き換える?? この先生は何かを考え、発言する時に始めは英語か何か外国語で考えてから頭の中で日本語に置き換えて発言なさっているのでしょうか。私は、というより大抵の日本人は最初っから日本語で考えて、それを口にしたり書いたりするので日本語に「置き換える」作業は不必要なのですが。

まあ、そこは揚げ足取りみたいに思われても困りますので これ以上は突っ込まないことにします。

カタカナ言葉や横文字が大した必要性もないのにあふれるのは、もちろん最近始まった現象ではありません。もちろん新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とも関係ありません。当たり前ですが。

日本人、特に大和民族は大昔から現代に至るまで異民族に支配されてその言語を強制されたという経験がありません。自分たちの言語を異民族に禁止されたという経験もありません。アジアの国々の中では極めてまれな存在といえます。日本人が日本語以外の言語を勉強するのはその時代時代の先進国から何かを学びとろうとする時に限られました。優れた文化や科学技術を我が国に取り入れようとしたのです。かつては中国語であり、オランダ語・ドイツ語・フランス語であり、近年は英語がそういう存在になり現代に至っています。

日本人にとって そういった外国語は軽蔑や憎悪の対象ではなく、常に憧れや尊敬・崇拝の対象でした。特に明治以降は欧米の言語こそが世界で最も優れた理想的な言語だと多くの日本人が信じて疑いません。今でもそうです。そういった考えは自分たちの母語である日本語がどうしようもないほど不完全で効率の悪い、欠陥の多い言語だという信念と表裏一体になっています。

現に、日本語ででも言えるけど英語で言うほうがなんとなく高尚だしカッコよく聞こえる。なんて考えている人がけっこういます。「オーバーシュート」とか「ロックダウン」を使いたがるのはそういう人たちなんでしょうか。
(そういえば誰かがこんな憎まれ口をたたいてました。「学歴が中途半端な人に限ってそんな人が多い」 失礼ww )

日本の学校での英語教育がそういった世界観を出発点にしている間はカタカナ語や横文字に弱い日本人は減らないでしょう。

2019年6月に大阪で開催されたG20サミット(金融・国際経済に関する首脳会合)。この「G20」は当然「ジー・にじゅう」と読むのだろうと思っていましたら、なんと「ジー・トゥエンティ」なんだそうです。驚きましたね。日本語の「にじゅう」ってそんなに恥ずかしい言い方なんですか?他の参加国、例えばフランス・ドイツ・イタリア・ブラジル・アルゼンチン等々は決して「ジー・トゥエンティ」なんて言わずにそれぞれ自国の言語で呼んでいると思いますよ。

日本語に対する、あるいは英語など欧米の言語に対する日本人のそういう感覚・.世界観が変わらない限り、日本は先進国とは呼べないと思います。経済的にはともかく文化的には後進国でしょうね。英語やフランス語を使うのが「先進文化」だと信じ込んでいる間は、です。

学校での英語教育をなくしてしまえ、という 少しばかり乱暴な意見を発する人も一部にはいます。最短でも3年間、長い人だと10年かそれ以上の間、週に何回か英語の授業を受けてきたはずなのに簡単な会話もできない、街で道を尋ねられても対応できない。だったらそんなものに時間と労力を費やすより、選択科目にして希望する生徒にだけみっちりと英語を集中的に教えれば、ほんとに英語を使いこなせる人が今より多くなって効果的だろうと言うのです。

たしかに、そうなれば中途半端な英語(英語モドキ?)を振り回すだけの人間が少しは減るかも知れません。でも実際にその効果が現れるのは40年後でしょうか、50年後でしょうか? 


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