ことばの百科店

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「マイ」とは何?

確定申告の季節がまたやって来ました。毎年、この時期になると憂鬱になります。会社勤めの方、つまり、給料だけの収入で生活している方はあまり縁がないかも知れませんが、けっこう鬱陶しいものですよね。

最近は書類を作成して税務署へ持って行くのではなく、インターネットで作成から提出までやってしまえる「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」というのができたのでずいぶん便利になりました。ただ この方法ですと「マイナンバーカード」なるものが必要です。当面は「マイナンバーカード」がなくても「ID・パスワード方式」で「e-Tax」を利用できるのですが、それはともかくとして「マイナンバーカード」って何ですか? というよりその前に「マイナンバー」って何?⌘⌘ 「私の番号」? ⌘⌘何それ?というお話です。

内閣府のホームページにそれの説明があるのですが、それがなかなか(ある意味で)面白いです。
まず、初っ端に

--マイナンバー(個人番号)とは何のこと?--

とあり、そのあと

--マイナンバーとは、日本に住民票を有するすべての方(外国人の方も含まれます。)が持つ12桁の番号です。--

と書かれています。マイナンバーとは個人番号のことですよ・・・とは書いてないのですが、「マイナンバー」 イコール 「個人番号」ということぐらいは当然わかっているでしょ?という感じで説明が始まっています。だったら最初っから「個人番号」と書けばいいんじゃないかと私は思いますが、どうなんでしょう。

「マイ」は英語の「my」のことなんでしょうか? そのページのひとつ上のページには日本語だけでなく英語をはじめ20以上の言語で「マイナンバー」についての説明があります。
その見出しが「About Individual Number(マイナンバーについて)」というのですよ。つい笑ってしまいました。
どういうわけか「About My Number(マイナンバーについて)」じゃないのです。

英語での説明を開いてみたのですが、見出しにも本文にも「My Number」なんか見当たらず「Individual Number」とあります。当然といえば当然ですが。

英語の「my」はもちろん「I」の所有格でしかありません。「he」に対する「his」、「we」に対する「our」と同じです。しかし いつ頃からでしょうか、日本ではカタカナ語の「マイ」に独特の意味合い(付加価値?)を持たせてしまいました。「マイホーム」であり「マイカー」などなどがそれです。単に「私の」とか「僕の」ではなく「個別の」「固有の」「その人専用の」みたいな意味になってしまいました。

「所有格」という概念が日本語にあるのかと考えてみると、うーん、どうなんでしょう。
「手をポケットに入れる」といえば済むところを英語では

⌘⌘⌘⌘「I put my hands in my pocket..」

と言わなければいけません。主語が自分でなければ「my」ではなく「your」とか「his」とかに変えなければいけません。
「彼は彼の手を彼のポケットに・・・」なんて言う日本人はまずいないでしょう。でも、英語の場合「put hands in pocket」では言いたいことが誰にも伝わりませんよね。

私は日本語には「所有格」という概念がないのだろうと思います。英語や西欧諸言語にある「所有格」という概念です。というより「代名詞」という概念すらあるのかどうか。ですから「マイホーム」も「マイカー」も「マイナンバー」も単に「私の」ではない、それ以上の意味を持ってしまったのだと思うのです。

もうずいぶん前ですが、ボウリングというスポーツが大いにさかんになった時期がありました。大抵の人はボウリング場に用意されているボールを使うのですが、自分専用のボールを持つ人もいました。穴の位置や穴の大きさは持ち主の手に合わせて作ったオーダーメイドです。そういうボールを「マイボール」と言いました。

それとか、スーパーで買い物をする時、自分専用の買い物カゴを用意して行く人が 最近は増えてきました。レジでチェック済みの商品を店のカゴではなく自分のカゴに入れてもらえば、支払いの後詰め替える手間がなくて便利ですよね。 歩いて持って帰るには不向きですが、車だと重宝します。そういう自分用の買い物カゴを「マイバスケット」というそうです。

まだあります。外食するとき店にある割り箸を使わないよう、自分用の箸を持ち歩く人がけっこういるそうです。その理由は色々あって それぞれに対して賛成やら反対やら色んな意見があるようですが、そういう自分専用の箸を「マイ箸」と呼ぶようです。

そうです。「マイなんとか」はすでに英語の「my」ではなく「自分だけの為にある特別なもの」という立派な?意味を持つことばになっているようです。

話は始めに戻りますが、「マイナンバー」も「マイナンバーカード」も つまりは「マイボール」とか「マイバスケット」とか「マイ箸」なんかの延長線上にあるのでしょう。内閣府のお役人方は「My Number」なんていう言い方は英語として決して通じない、それを充分にご存知だからこそ 英語での説明文には「Individual Number」という用語を使用していらっしゃるのだと ようやく理解した私でした。

「英会話イーオン」講師:箱田 勝良先生の『英語圏では「マイナンバー」が絶対NGなワケ』がとても面白くて参考になります。感謝。

(つけたし)どういうわけかフランス語の説明ページには「Numéro Individuel (Mon Numéro)」とあります。「Numéro Individuel 」はもちろん「Individual Number」のことなんでしょうが、「Mon Numéro」は、え?もしかして「My Number」のフランス語訳?


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