ことばの百科店

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連濁公害

このサイトに何度かお越しになった方は多分お気づきだろうと思いますが、「ことばの百科店」はツィッター(Twitter)と連携しています。ツイッターを使い始めたのは何年も前ですが、専用のアカウントを新設し、このサイトとの連携を始めたのはつい最近です。
おなじみの青色の鳥のマーク(2カ所あります)をクリックするとツイッター画面に移動し、私のプロフィールやタイムラインが表示されます。

それはそれとして、ユーザー名「Xonanox4155」のプロフィール欄に

⌘⌘⌘⌘出身は三重県松阪(マツサカ)。「マツザカ」と言われると
⌘⌘⌘⌘激怒する(?) 

と書いています。「激怒」云々はもちろん冗談ですが、少しばかり本気も混じっています。

東京の赤坂を「アカザカ」と発音する人はどれほどいらっしゃるでしょうか。東京(およびその周辺)にお住いの方なら、多分、ゼロに近いでしょうね。「アカザカ」なんて言ったら「この田舎者め」という顔をされそうですね。(あからさまに笑ったりする人はそういないでしょうけど) 浅草を「アサグサ」なんて もっての外かも知れません。

「〇坂(阪)」という地名・人名は全国に沢山ありますが、

⌘⌘⌘⌘⌘江坂、小坂、日坂など3拍(かな3文字)
⌘⌘⌘⌘⌘赤坂、浜坂、舞阪など4拍(かな4文字)

の名前は大抵「〇サカ」です。もちろん例外もありますが。
5拍以上、例えば神楽坂、田原坂、道玄坂などは「〇ザカ」と発音するようですね。

私が今住んでいる大阪はどうなんでしょう。大阪を「オオザカ」と発音する人に私は一度も会ったことがありません。どなたも例外なく「オオサカ」です。
時代劇を観るとたまに大阪(大坂)を「オオザカ」と呼ぶ人物が登場します。かつてはそんな人物がいたのかも知れませんが、そういうのは自分の藩以外の世界を全く知らない田舎侍でしょう。赤坂を「アカザカ」と発音するレベルだと思います。(失礼かな?)

大阪の北部に茨木という市があります。大部分の市民は「イバラギ」と呼びますが、根っからの地元民の発音は「イバラキ」です。ここで言う”根っから”は5代も6代も昔から市内に住んでいる人たちのことです。でも、1950年代ごろから色んな地方から人々が進学やら就職やら転勤やらで移住してきて大阪の郊外に住みつきました。そして、あっという間に地元民を圧倒する人数に膨れ上がりました。(私もその一人ですが)
この街の正しい名前は「イバラキ」なんだからその呼び方を尊重しなきゃ、などという考えの人はほとんどいません。大抵は漢字の「茨木」という字面だけ見て、ああ「イバラギ」ね、わかったわかった、です。若い世代だと祖父母の代にこの街にやってきた、という人も沢山います。じいちゃんもばあちゃんも両親も「イバラギ」って呼んでいますから、正しくは「イバラキ」だなんて夢にも思いません。

もう一つ、茨木市の南隣に摂津市というのがあって、その中に鳥飼という地域があります。呼び方はもちろん「トリカイ」なのですが、近年「トリガイ」と発音する住民が増えてきています。まさか寿司ネタじゃあるまいし「鳥貝」はないだろうと思いますが、現に沢山います。もちろん遠くの地方から移住してきた人たちです。この地域も茨木市あたりに続いて新住民が増えて、人数では地元民を超えているようです。

こういった例は日本中に、特に大都市周辺にはいくらでもありそうですね。
本来「サカ」であったり「キ」であるべきものが、別の単語の後ろに来ると「ザカ」になったり「ギ」になったりする現象を”連濁”といいますよね。もちろん、地名・人名だけでなく
⌘⌘⌘⌘「イロ+カミ→イロガミ」とか
⌘⌘⌘⌘「タケ+ツツ→タケヅツ」とかもそうです。

でも、枚方を「ヒラガタ」なんて誰も言いません。吹田を「スイダ」なんて誰も言いません。「ヒラカタ」であり「スイタ」です。どういう場合に連濁するのか、どういう場合に連濁しないのか明確なルールはありません。しかし、地元でずっとずっと昔からこう呼んでいる、という事実を無視するのは自分の住む街に対して失礼だと思います。こういう連濁を、私は、「連濁公害」と呼ぶことにしています。

さて、冒頭に出てきた松阪も「連濁公害」の被害者です。「マツザカ」と平気で呼ぶ人がいかに多いことか(怒)。「ザカ」ではなく「サカ」と言ってほしいと思います。ただ根っからの地元民は「マツザカ」ではなく「マツサカ」でもなく、「マッツァカ」と呼ぶのが一般的です。「待ったか」の「た」を「ツァtsa」に置き換えて発音してみて下さい。そう、それが「松阪」の正しい?発音です。しかし、地元民の意識としては「マッツァカ」というのは地元民同士でのいわば「愛称」であって、公式には「マツサカ」なんだということになっています。

ところが、です。地元民には地元民なりにもうひとつ複雑な顔があります、ややこしい話ですが。東京とか大阪とかの大都市圏からやってきた人(特に初対面の相手)と会話する時は 地元民自ら松阪を「マツザカ」と呼ぶことがけっこうあるのです。え?どういう現象?と思われるかも知れませんが、事実は事実です。

大都市圏からやってきた人が「マツザカ」と言うんだから、それが「標準」語に違いない、自分たちの発音が「訛って」いるのだという意識です。都会人には想像もつかない現象でしょうが、間違いなくあります。それは あくまでも「意識」であって、ルールとか決まりとか約束とかいうのではなく、別の世界観です。「忖度」とでも呼ぶべきなのでしょうか。そういう とても卑屈な意識が存在するのはまぎれもない事実です。

東京の言葉が「標準」語であり、「標準」語こそが日本中のお手本となる「正しい」日本語なのだ、という意識は松阪に限らず、全国いたるところに今でも根深くあります。それがバカバカしい勘違いとして笑い話になる時代は、果たして来るのでしょうか。

長崎県の佐世保市。この「佐世保」は「サセホ」?「サセボ」?、どちらが正しいでしょうか。地図を見ると「サセボ」という表記が多いように思いますが・・・
誰かが言いました。「サセホ」でも「サセボ」でも「ほぼ」同じでしょ?もちろん冗談ですww


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