ことばの百科店

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「安倍はん」はあっても「小泉はん」はない

古典落語を聞くと「おとっつぁん(お父つぁん)」という言葉がときたま出てきます。(江戸の落語じゃなく大阪の落語ですよ)
貧乏長屋の子倅(こせがれ)なんかじゃなく、そこそこの商家の若旦那が父親に向かって「お父つぁん」と呼ぶのです。時には、嫁が旦那つまり舅(しゅうと)に対して「お父つぁん」と呼ぶ場面もあります。現代語の「お父さん」や「パパ」なんかよりはるかに丁寧で折り目正しい呼び方なのです。

「お父つぁん」なんて江戸っ子の言葉遣いだと信じて疑わない大阪人がそれを知ったら卒倒するかも知れませんね。

別の記事で「大阪で生まれ育った人たちですら、近年、その辺りが怪しくなってきています」と書きましたが("東京で「ありがとう」、大阪では「おおきに」?”)、そんなことは他にも色々あります。

だれかを呼ぶとき、大阪では「〇〇さん」ではなく「〇〇はん」というのだと信じ込んでいる人がけっこういます。本当はそうじゃないのですよ。
「〇〇さん」が「〇〇はん」に音変化することは、もちろんあり得ます。(大阪住まい ン十年の私でもそれほど頻繁に聞かないのですが、ゼロではありません、確かに)
しかし、いつでもどんな場合でも「さん」が「はん」に音変化するわけではなく、極めて厳密なルールがあります。

>あ段、え段、お段に続く場合 → 「さん」が「はん」に音変化し得る(いつも必ず音変化するわけではないが)。
>い段、う段、「ん」に続く場合 → 決して「さん」が「はん」に音変化しない。

なので、「野田さん」「安倍さん」「宇野さん」はそれぞれ「野田はん」「安倍はん」「宇野はん」と呼ばれることもあるかも知れませんが、「小泉さん」「海部さん」「菅(かん)さん」は間違っても「小泉はん」「海部はん」「菅はん」とはならないのです。

かつての大人気漫画「じゃりン子チエ」の作者・はるき 悦巳さんは生粋の大阪人らしいのですが「じゃりン子チエ」には「オジイはん・・・」などというセリフが何度も登場します。「オバアはん」はあっても「オジイはん」はあり得ないのですがねえ。
先ほど述べました「大阪で生まれ育った人たちですら、近年、その辺りが怪しくなって・・・」というのはまさにそのあたりなのです。

また、直木賞作家の黒川博行氏(愛媛生まれの大阪育ち)の作品でも、例えば「ふぐ善はん」とか「黒ケンはん」とか(「てとろどときしん」より)が平気で登場します。

まあ、「実態」をありのままに描写した、と言われればそれまでの話ですが・・・(^^)


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