ことばの百科店

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東京で「ありがとう」、大阪では「おおきに」?

感謝の気持ちを表現する「ありがとう」という言葉は恐らく日本中の地域で使われていると思われますが、なぜか、大阪や京都では「ありがとう」ではなく「おおきに」と言うのだ、という いい加減な知識がまかり通っているように感じます。

高い⌘⌘ ⌘⌘高く ⌘⌘⌘⌘ 高う
早い⌘⌘ ⌘⌘早く ⌘⌘⌘⌘ 早う
有難い ⌘⌘有難く ⌘ ⌘ 有難う

こう↑並べて見れば「有難う」が関東発祥でないことぐらい簡単にわかるはずなんですがねえ。

何年か前、大相撲の横綱・朝青龍関が春場所(大阪場所)で優勝したとき、優勝インタビューの最後に「大阪の皆様、おおきに!」と叫んだのを憶えています。
モンゴル出身の彼に、一体誰がそんな日本語を教えたのか知りませんが、私は少しばかり複雑な気持ちでした。なぜだと思いますか?

たしかに「おおきに」は大阪でよく使われることばなのですが、大阪の ある程度以上の年配の人は誰かに礼を言うとき、単に「おおきに」ではなく「おおきに ありがとう」とか「おおきに ありがとうございます」とか、場合によっては「おおきに ありがとうさんです」とか言うのが普通です。単に「おおきに」とだけ言うことが絶対ないとは言いませんが、その場合は後半の「ありがとう・・・」を省略したという意識を伴います。

当然のことですが、「おおきに」は「大いに」であって「沢山」とおなじ、つまり英語で言う「Thank you very much.」の「very much」なんですよね。英語でお礼を言うとき「Very much!」なんて言うひとは多分いないでしょう。「おおきに」だけでは決して礼儀正しい言葉遣いとは言えないのです。大阪で生まれ育った人たちですら、近年、その辺りが怪しくなってきています。

ただ、京阪神地域 特に都市部を離れて周辺の地方へ行くと(三重県とか山陽・山陰あたりまで含めて?)「おおきに」あるいは「おおきん」がそれだけで「ありがとう」の意味で使われることがあるのは事実です。でも決して その土地に「ありがとう」という言い方が存在しないわけではないのですよ、念のため。

20年近く前、パソコン通信というものにハマっていたのですが、あるフォーラムの談話室でこんな発言をした大阪の人がいました。

  「大阪では基本的に『いる』と言わず『おる』と言います」

私はその人に以下の浄瑠璃(義太夫節)の文句を紹介しました。

「今頃は半七様どこにどうしてござらうぞ。(中略)添ひ伏しは叶はずともお傍にゐたいと辛抱して、これまでゐたのがお身の仇。(中略)私やこのやうに思うてゐる

有名な「艶容女舞衣(はですがた おんなまいぎぬ)」の「酒屋の段」の一部ですが、江戸時代の大阪でも「ゐる」が使われていたのです。学校教育やラジオ・テレビの影響で東京から流入してきたわけではないのです。
その談話室の発言者は何の反論もせず黙ってしまいました。

私は田舎から大阪に出てきて以来、ずうっと北摂地域に住んでいるのですが、例えば「・・しとる」とか「・・しちょる」という言い方をするのは私のような地方出身者か、北摂でも周辺の山間部の人に限定されていました。都市部または都市部近隣の人は決してそんな言い方をしなかったのです。
(但し、「いる」は「いてる」という面白い言い方に変化してしまっていますが)
北摂(ほくせつ)というのは高槻市や茨木市を中心とする淀川右岸の北大阪地域です。

もちろん北摂だけではありません。私は堺市出身の同輩から「『おる』とか『・・しとる』とかいう言葉遣いは嫌いや」と言われたことをよく憶えています。
(半世紀以上前の話ですが)
でも、確かに最近のテレビ番組に登場する若いお笑い芸人の話し方を聞いていると「おる」とか「・・しとる」をけっこう使いますね。

さきほど「大阪で生まれ育った人たちですら、近年、その辺りが怪しくなってきています。」と述べましたが、実態を観察せずに思い込みや先入観(もしくは受け狙い?)で「大阪はこうや」「大阪弁ではこうや」などと解説する「嘘つき大阪人」がけっこういるので騙されないようご注意ください。


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